落ち目の女優・人見亜希にある日、司法書士から母親名義のマンションの相続放棄の連絡が入った。36年近く前に別れたきりの母。ずっと行方はわからないがどこかで元気でいる……。
そんな気持ちを打ち砕く知らせを受け、母の終の棲家を訪ねると、同じマンションに住んでいる母と腐れ縁の老女・原田尚子が待ち構えていた。さらに、母を知る親戚のミュージシャンの男・竹原圭輔が部屋に訊ねてきて……。
母は自分のことをどう思っていたのだろうか――?
相続放棄を強要する尚子から受ける心の痛み、見知らぬ血縁の圭輔から掛けられる優しい言葉、そしてマンションには、他にも母を知る人物、亜希を振り回す人物が次々と訪ねてくる。
遺産放棄まで猶予三ヶ月。母の荷物が散乱した部屋に住む決意をした亜希は、母の匂いが染みついた荷物を片付けていきながら、空白だった心に母への様々な想いが彩られていくのだが……。
母親とは何かを問う複雑な愛情劇を、時にウィットな喜劇も織り交ぜながら叙情性豊かに描く。
果たして、亜希は母の愛を見つけられるのか――?
脚本家・監督の丸山智と脚本家・演出家の池谷雅生が夫婦で結成したユニット。舞台・映像を中心に、時には別ジャンルでも、密度の濃いオリジナル作品を発表していく。
カワセミ(キングフィッシャー)が狙った獲物は絶対に外さないで釣り上げるように、才能あるキャスト・スタッフを絶対に外さずに釣り上げていくコンセプト。
参加者が空飛ぶ宝石と言われる“カワセミ”のように輝ける、エンターテインメントの水辺になることを目指している。